ようこそ。神戸大学保健管理センターへ。

今、復活!? ・・・その後の結核

我が国初の結核療養所が兵庫県須磨浦に設立されたのは明治22年のことでした。 それから一世紀余に渡って様々な対策が講じられ、戦後だけを振り返ってみましても、結核の新登録患者数 (その年に新たに患者として届け出のあった数) は、昭和 26 年の年間約 60 万人から、平成9年には 42,750 人になりました。しかし、この数も決して少ないものではありません。今もって、一年間に人口 10 万人当たり 33.9 人が新たに結核患者となっているのです。しかも、長年ほぼ減少傾向を続けてきた新登録患者数が、この年38 年ぶりに増加に転じているのが気に掛かります。世界的にも結核患者が増加し、平成 12 年には 1,000 万人を越えるものと推計されています。

こうした中で、大学における結核はどうなっているのでしょうか?同じ年、全国大学保健管理協会近畿地方部会が近畿地区の国公私立大学において実施した結核現状調査 (平成9年度調査参加校 85 校) では、在学生 455,226 人中 483 人 (在学生の 0.11 %) に胸部 X 線検査において結核陰影が発見されています。このうち、治療の必要があるとされた者は 96 人、経過観察が必要とされた者は 239 人でした。定期健康診断その他の機会を含め、胸部 X 線検査を受けない在学生が約 30 %にも達することを考えますと、実際にはさらに多くの者が結核を病んでいると推測されます。神戸大学でもこの年、経過観察が必要な者が、新入生健康診断だけで8人 (受検者の 0.21 %)、卒業予定者健康診断で5人、医学部医学科健康診断で1人、医学部保健学科健康診断で1人、留学生健康診断 (春期、秋期) で3人発見されています。また、職員におきましても、定期健康診断で7人、農学部附属農場健康診断で1人の者が結核性病変疑いの下に経過観察が必要とされました。さらに年間を通じて、活動性結核で治療を受ける患者さんが毎年のように見い出されているのです。

昨今の結核は自覚症状に乏しいことも多く、例えば昨年、本学における卒業予定者健康診断で右上肺野に異常陰影 (浸潤影) を指摘された学生さん (右側の図参照) も、全く無症状で体育会系クラブでバリバリ活躍していました。この学生さんは、新入生健康診断の時には全く異常の無かった方ですから、結核への感染は入学から4年次進級時までの3年間に起こったものと考えられます。幸い、病巣からの結核菌の排出 (排菌) は認められず事無きを得ましたが、結核の治療を必要とする者が自らも気付かず、他にも気付かれずにキャンパスライフを送っている可能性は日常的にあるものと申せましょう。近隣府の大学では、喀血した学生に端を発し、同じクラスやサークルに属する学生を中心に精密検査を実施するという事例が発生しています。

現在、神戸大学における卒業予定者健康診断の受検率[学部生 56.6 %、大学院生 55.0 % (平成10年度) ]は新入生健康診断の受検率[学部生 97.9 %、大学院生 77.8 % (同) ]に比べると低く、また、2・3年次生に関しましては、医学部を除き、胸部 X 線検査は実施されておりません。大学によっては、2年次以降の健康診断受検率の向上を目指して、「健康診断を受検しないと、当該年度の定期試験を受けることができない」といった制度を取り入れているところもあるようです。本学におきましても、保健管理センター設置以来の飛躍的な学生数の延び (昭和 45 年度 9,470人、平成 10年度 16,407 人) に対応した施設の整備や、健康診断実施項目の増加に伴う費用の問題とともに、こうしたことにも目を向けるべき時期にきているのかもしれません。

卒業予定者健康診断で発見された右上肺野異常陰影 (浸潤影) (左図 部分)。
新入生健康診断時の胸部 X 線検査 (右図) では全く異常が認められない。

 

神戸大学保健管理センター

〒657-8501 神戸市灘区六甲台町1番1号
TEL:078-803-5245   FAX:078-803-5254