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神戸大学における結核集団感染!・・・望まれる定期健康診断100%受検への対策。

〔神戸大学の事例におけるツベルクリン反応検査の発赤径分布〕
強陽性者 (30mm以上) の率が高く、双峰性 (↓↓) を示す。
は予防内服適応者

◆核集団感染の発生

本学2年次学生から排菌を伴う結核患者が発生し、同じクラブに所属する学生など「濃厚接触者」に対する定期外集団検診が実施されました。胸部X線検査では新たな発病者はありませんでしたが、ツベルクリン反応検査では21人が強陽性 (30mm以上) を呈し、10月6日神戸市保健福祉局から「結核集団感染」として発表されました。

◆核集団感染の発生

「結核集団感染」は「"同一の感染源"が2家族以上にまたがり,"20人以上"に結核を感染させた場合 (厚生省「結核定期外検診ガイドライン」)」を言います。ツベルクリン反応検査における強陽性は、それだけでは"同一の感染源"からの感染を意味するものではありませんが、今回は①「濃厚接触者」の内、強陽性を呈した者の率が41.2%と、感染源の無い集団における率 (通常10%前後) より明らかに高かったことや、②「濃厚接触者」における発赤径分布が、感染源を有する集団における特徴である双峰性 (右下図) を示したこと (感染源の無い集団では単峰性となる) から"同一の感染源" (発端となった患者) からの感染である可能性が高いと判断されました。なお、その後のツベルクリン反応検査で強陽性を呈する者は2人増え、合計23人の者が結核の発病を防ぐ薬を予防内服していますが、これらの者から他に感染することはありません。また、発端となった患者と同じ講義に関係した全ての学生や教官は「その他の接触者」に該当すると考えられ、8月の職員一般定期健康診断や9月の2年次生等健康診断などの際に胸部X線検査の機会が設けられました。幸い、受検者からは新たな患者は発見されませんでしたが、結核菌への感染から発病までの期間は6~12ヶ月間が最も多いとされており、今後、毎年実施される定期健康診断を受検することが肝要です。

◆大学と社会における結核の現状

我国における結核の新登録患者数 (その年に新たに患者として届け出のあった数) は平成10年には44,016人を数え、平成11年には厚生省から「結核緊急事態宣言」が出されました。全国大学保健管理協会近畿地方部会が近畿地区の国公立大学において実施した結核現状調査 (平成9年度調査参加校85校) でも在学生の約1,000人に1人が胸部X線検査で結核病変を指摘され,約5,000人に1人が活動性結核で医療を要する者とされました。神戸大学でも、排菌こそ伴いませんでしたが、活動性結核の患者が毎年のように発見されてきています。現代社会は空調の効いた気密性の高い建物で居住する機会が多くなり、結核に対する免疫を持たない人の増加とも相まって、ひとたび排菌を伴う結核患者が発生しますと、集団感染に発展する可能性が高まっています。また最近は個々人の活動範囲も広がり、今回の事例でも「濃厚接触者」とされた者の中に他大学等の関係者が6人含まれていました。本学におきましては臨床実習や介護実習、教育実習といった機会を有する者もあり、これらの者から排菌を伴う結核患者が発生しますと、社会問題にまで発展する可能性すら有しています。

◆結核集団感染の再発防止に向けて

結核集団感染の最も有効な予防策は定期健康診断の完全実施による発病者の早期発見です。しかるに本学における定期健康診断の受検率は新入生を除いて、甚だ低く[2・3年次生健康診断11.9%、卒業予定者健康診断53.5% (平成11年度) ]、今回の事例を通じた灘区保健部との協議におきましても「来年4月実施の定期健康診断に向けて受検率が100%となるよう学内制度を整えるなど対策を講じること」とされました。他大学の例では「健康診断を受けなかった者は、当該年度に施行する試験を受けることができない。」 (京都大学) といった規定を設け、実効を挙げている大学もあります。類似の方法としましては、「当該年度の単位を認定しない」,「臨床実習、介護実習、教育実習等への参加を許可しない」といった方法や、「学生証を年次更新とし、定期健康診断の受検を更新条件とする」などといった方法が考えられますが、いずれもペナルティーを科すことが目的ではありませんので、未受検者には学外の病・医院での健康診断証明書の提出をもって受検したものと看做すといった措置が必要となりましょう。結核は初期の段階で発見されれば排菌もなく、治療を受けながら通学や日常生活を行うことも可能で、この意味において定期健康診断の受検は本人にとっても決して不利益なことではないのです。本学における具体的な方策は今後、全学委員会である保健管理センター運営委員会において検討されることになりますが、皆様の御理解と御協力の程お願い申し上げます。

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