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年末年始・・・あなたの肝臓、大丈夫?

今年もあと一ケ月余となり、"忘年会"…といった声もちらほら聞こえてくる頃となりました。アルコールをたしなむことの多くなる年末年始、肝臓にとっては受難の時を迎えます。晩酌など、日常の習慣的な飲酒 (慢性飲酒) による肝障害をお持ちの方にとりましては、健康状態に決定的なダメージを与えることのないよう、細心の注意が必要な時でもあります。

アルコールによる肝障害 (アルコール性肝障害) には(1) アルコール性脂肪肝、(2) アルコール性肝炎、(3) アルコール性肝線維症、(4) アルコール性肝硬変などがあります。アルコール性肝障害は重度になるまで自覚症状に乏しく、定期健康診断や人間ドックで血液検査値の異常を指摘されて、初めて気付かれる方も多いようです。アルコール性肝障害の最も早い時期にはγガンマ-GTPが上昇し、アルコール性脂肪肝 (肝臓に中性脂肪を主とする脂質が蓄積した状態) になるにつれ、GOT (AST)、GPT (ALT)、コリンエステラーゼ (ch-E) などが上昇してきます。アルコール摂取量が急激に増加するとアルコール性肝炎を発症し、肝障害が一気に進む結果、腹痛、発熱、黄疸などを来たし、さらに脳障害や循環呼吸不全、腎不全に至って死亡することもあります。慢性に経過する場合には、肝臓は徐々に硬く変性し、肝線維症・肝硬変へと進行します。肝線維症では禁酒による肝機能の改善が期待できますが、肝硬変では改善が難しくなり、やがて種々の合併症を併発して生命に危険が及ぶようになります。例えば血流の変化に伴う胃・食道静脈瘤の発生と破裂、解毒機能の低下による昏睡 (肝性昏睡) などです。

戦後、我が国におけるアルコールの消費量は年々増加し、今や、アルコール性肝障害は生活習慣病の一つとして認識されるようになってきました。神戸大学における職員一般定期健康診断でも、血液検査を受けられた方の4人に1人 (25%) に肝機能検査 (γ-GTP、GOT、GPT) の異常が発見され、腹部超音波検査で脂肪肝を指摘される方も受検者全体の10%近くに上っています。

アルコールは人間関係を円滑にし、喜びを倍加させ、苦しみや悲しみを癒してくれる素晴らしい飲み物です。しかし、慢性飲酒によって肝障害のみならず、様々な臓器障害が引き起こされることが知られています。人生長くアルコールのもたらす恩恵に浴すためにも、慢性飲酒を避け、アルコールと上手に付き合いましよう。肝機能や健康に不安のある方…早めに保健管理センター「からだの健康相談」をご利用ください。

保健管理医
中田 裕久(なかた ひろひさ) 先生(内科) をご紹介します。

 昭和62年 神戸大学医学部卒業,神戸大学医学部附属病院,兵庫県立淡路病院勤務の後,平成2年4月より神戸大学大学院医学研究科博士課程に進学。平成6年3月修了とともに,同年4月,神戸大学医学部附属病院(老年科)助手,医局長。米国ノースカロライナ大学に留学し,平成9年6月より神戸大学医学部(老年医学講座)助手。同年7月,保健管理センター保健管理医併任となり,平成11年4月より現職(神戸大学保健管理センター助教授,保健管理医)。日本内科学会,日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会,日本糖尿病学会,日本癌学会,米国消化器病学会に所属。内科全般に渡る「からだの健康相談」に活躍中です。気になる症状のあるあなた。ぜひ一度,御相談ください!

 

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