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全国大学保健管理研究集会シンポジウム 「結核の昨日・今日・明日」における討議風景 (平成12年10月18日) |
新年明けましておめでとうございます。西暦 2001年、新しい世紀を開く年を迎えました。先の 20世紀は二度の世界大戦を経験し"戦争の世紀"ともいわれましたが、医学・医療の分野では人類の将来に繋がるような画期的な発見が相次ぎ、感染症の面でも数多くの病原体の同定と抗生物質など新しい治療法の開発がなされた世紀でもありました。しかし全ての感染症が克服された訳ではなく、毎年のように流行を繰り返すインフルエンザをはじめ、O-157、HIV (エイズ) ときそうです。 いった新興感染症、結核のような再興感染症の問題が今世紀に持ち越されています。戦争の世紀は終わっても、人類と感染症との戦いはまだまだ続 大学を含めた学校において予防すべき伝染病については、学校保健法施行規則で (表1) のように規定され、定められた期間の出席停止と学校設置者への報告が義務付けられています。昨年は、神戸大学においても結核集団感染が発生し、予防内服適応者は23人におよびました。また、クラスメートやサークルメートを中心とする麻疹や流行性角結膜炎の集中的な発生もありました。本学にとりまして、昨年はまさに"感染症の一年"でもあったと申せます。 この度まとめられた国立大学等保健管理施設協議会による「結核に関する調査」 (平成12年1月実施) によれば、アンケートに回答した国立の大学・大学院大学・短期大学100校の内、平成10年度に35校、平成11年度に37校において活動性結核患者が発生し、結核集団感染を経験した大学も平成元年以降 10校にのぼっています。神戸大学における結核集団感染の発生はこの調査の後のことでしたから、本学の事例を加えますと、11校ということになります。また、平成6年から平成10年までの5年間に、全国で113 件の結核集団感染が発生したとの報告もあります (表2)。
昨秋、神戸において開催された第38回全国大学保健管理研究集会では「結核の昨日・今日・明日」をテーマにシンポジウムがもたれ、日本における結核罹患率が今もって高い理由の一つとして「"健康管理の機会に恵まれない特定集団の存在"とともに"健康管理の機会があっても、これを放棄している人々の存在"が見逃せない。」との指摘がありました。学校における定期健康診断の実施については学校保健法に規定され、検査項目や検査方法、技術的基準についても学校保健法施行規則に詳細が定められています。中でも「結核の有無」に関する検査については、小・中・高等学校の第一学年と大学の全学年において行うこととされています。現在、本学におきましては結核集団感染の再発防止に向けての対策が急がれており、医学部では昨年度の定期健康診断における受検率の低さに鑑み、職員および大学院生を対象とした臨時健康診断が1月から2月にかけて実施されることになりました。また、全学的にも4月に実施される定期健康診断の受検率が100%となるよう対策を検討していただいているところです。新しい世紀の始まりである本年が、神戸大学における"感染症予防の一年"となることを願ってやみません。
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