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結核集団感染の発生を受けての取り組みに・・・全国大学保健管理研究集会"優秀演題賞"

第39回全国大学保健管理研究集会"優秀演題賞"表彰状と記念品が授与された。

9月26・27日の両日、愛媛県松山市で開催された第39回全国大学保健管理研究集会において、本学保健管理センターからの報告「新入生に対する『入学以前の結核感染の機会』に関する調査の有用性について」 (発表者:木村純子主任看護婦) に"優秀演題賞"が贈られました。結核集団感染の発生を受け、原因の解析に基づく再発防止への取り組みの一環として、本学での健康調査において行った試みを、どのような大学にとっても"実施可能"な"簡潔"で"有効"な対策の一つとして提示したものです。

神戸大学における結核集団感染の発端者は高校3年時に同級生から感染

平成12年7月、本学において発生した結核集団感染での「濃厚接触者」は学内51名・学外7名の合計58名に上り、結核の発症を防ぐ薬の「予防内服適応者」も23名に達しました。発端者となった2年次学生の感染経路に関するその後の調査では、この学生が神戸大学に入学する2ケ月前の平成11年2月に、当時通っていた高校の同級生が"排菌"を伴う結核で入院していたことが判明するとともに、他の大学に進学した同級生2名と副担任1名の3名も、神戸大学における結核集団感染の発端者とほぼ同時期に結核を発症していることが明らかになりました。結核菌のDNA分析により、神戸大学における結核集団感染の発端者と、これら3名の発症者の原因菌は同一株と判明し、これらの者はすべて高校3年時の患者から感染し、その年4月の新入生健康診断 (副担任は職員健康診断) における胸部X線撮影では異常なく、約1年ないし1年半を経て発症したものと考えられました。

「入学以前の結核感染の機会」の有無を知ることの重要性

通常、上記のようなケースでは、所管保健所によって接触者検診や定期外集団検診が順次、計画・実施されることになっています。しかし今回の場合、神戸大学における結核集団感染の発生まで1年余の間、当該高校における結核発生の事実は同級生にすら伝えられていませんでした。結果として、少なくとも3つの大学で"排菌"を伴う結核患者が発生し、本学では結核集団感染にまで至りました。 結核の発症は結核菌の感染から6~12ケ月後が最も多いとされており、本学における発端者の場合では17ケ月後でした。こうしたことから、大学においては新入生に対して「入学以前の結核感染の機会」の有無を調査し、入学後に結核を発症する可能性の高い学生 ("ハイ・リスク・グループ") を予め把握することが、結核集団感染の発生を未然に防ぐ上で極めて重要であると考えられました。

平成13年度神戸大学新入生における“ハイ・リスク・グループ”は57名

平成13年4月、本学では新入生全員に「入学以前の結核感染の機会」をはじめとする"結核"に関する質問項目を追加した健康調査を実施しました (回収率98.1%)。その結果、「過去2年以内に結核で入院したり、入院している者」が57名存在し、これらの者は、入学後に結核を発症する可能性の高い"ハイ・リスク・グループ"として、今後特に注意深い経過観察の下に置かれる必要があると考えられました。これら57名については「過去2年以内に結核で入院したり、入院している者」が誰であるかも調べられていますが、家族は4名のみで、学校など教育関係施設の人が42名 (73.7%) を占め (上図)、教育現場で結核感染の機会が増加していることが窺われました。本学においては結核集団感染の発生を受け、学生健康診断規程を改定するなど、定期健康診断100%受検を目指した対策が整えられてきていますが、職員の皆様におかれましても毎年の職員定期健康診断や人間ドックを必ず受検していただけますようお願い申し上げます。

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