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冬! 温泉、加湿器 ・・・レジオネラ症に気を付けて。

寒い冬。温かいお風呂が何よりの季節となりました。休みの日には温泉旅行を計画している方もおられることでしょう。また、乾燥した空気への対策として加湿器を使っておられる方も多いのではないでしょうか。こうした中、レジオネラ症 (レジオネラによる感染症) の報告が増えてきています。

人工環境下で増殖するレジオネラ

レジオネラ ( Legionella ) は土壌や河川水・湖水の中などに生息する細菌で、自然環境下での菌量は通常、発病に繋がるほど多いものではありません。患者発生の原因となっているのは、もっぱら人工環境下で増殖した菌で、温泉をはじめとする公衆入浴施設、家庭用フルタイムバス (24時間風呂)、人工の噴水・滝、超音波式加湿器、循環式給湯設備、空調設備 (冷却塔水) などが感染源となった例が報告されています。昨年3月静岡県内の温泉で発生した集団感染では患者23名 (内、死者2名)、同年6月茨城県内の総合福祉センタ-入浴施設で発生した集団感染では患者43名 (内、死者3名) を数えました。いずれも循環式浴槽水を用いていた施設で、増殖したレジオネラがエアロゾルとして空中に舞い上がり、それを吸い込んだ入浴客が感染したものです。家庭用フルタイムバス (24時間風呂) や人工の噴水・滝が感染源となった例でも、長期間に渡って同じ浴槽水や水を循環させたり、清掃・消毒が不充分であったことがレジオネラの増殖をひきおこし、レジオネラ症の発生に繋がっていました。広島県の病院では昨年1月、超音波式加湿器の水が感染源と考えられる新生児患者2名が報告されています。

重傷化しやすいレジオネラ肺炎、早期診断のために必要な正確な情報

レジオネラ症には軽症のポンティアック熱と重傷化しやすいレジオネラ肺炎とがあり、レジオネラ肺炎は症状だけでは他の肺炎と区別がつきません。早期に正確な診断と適切な治療を受けるためには、温泉をはじめとする公衆入浴施設の利用の有無や、日常の生活環境などについて正確な情報を担当医に伝えることが肝要です。医師の念頭にレジオネラ症が浮かびさえすれば、血液・尿・喀痰を用いた検査 (特に迅速なのは尿中抗原検出法) で診断し、有効な抗生物質 (エリスロマイシン、リファンピシン、フルオロキノロンなど) で治療することが可能だからです。レジオネラの感染から発病までの潜伏期間は約1~10日間で、38℃以上の高熱と悪寒・全身倦怠感に続いて咳・胸痛・呼吸困難が出現します。咳は、最初のうち痰を伴わない乾性ですが、1~2日後には70%近くの患者さんで膿性ないしオレンジ色の痰を伴うようになります。

浴槽水と加湿器の水はこまめに交換を!

日本におけるレジオネラ症患者の年齢は0歳から90歳代まで巾広く分布しており (下図)、感染源として温泉など公衆入浴施設、家庭用フルタイムバス (24時間風呂) の占める割合が非常に多いことが特徴的です。レジオネラに感染する可能性を低くするためには、温泉など公衆入浴施設では管理者が適切な衛生管理を行うことは当然のこととして、利用者としても気泡ジェットなどエアロゾルが生じやすい器具を使用しないこと、家庭用フルタイムバス (24時間風呂) では浴槽水のこまめな交換や清掃・消毒を行い、浴槽水をシャワーに用いないことなどの注意が必要です。また、加湿器についても超音波式よりは熱水式とし、水タンクを清潔に保ち、使用する水 (できれば滅菌水) も毎日交換しましょう。快適な冬を送るために・・・

望まれる“需要増に対応できる体制の整備”と“適切なフィードバックシステムの確立”

昨年6月には文部省高等教育局「大学における学生生活の充実に関する調査研究会」から「大学における学生生活の充実方策について」と題する報告 (いわゆる廣中レポート) が出され、学生相談における今後の改善方策としては、 (1) 学生相談の捉え直し、 (2) カウンセラー等の充実、 (3) 学生相談機関と学内外の諸機関との連携強化、 (4) 「何でも相談窓口」の設置、 (5) 不登校への対応が挙げられました。本学におきましては特に、需要増に対応できる健康相談体制の整備と、 (3) の中に謳われている「学生の現状をよく知る立場にある学生相談担当者の意見が、相談員の個人的な努力や人脈でのみフィ-ドバックされるのではなく、システムとして適切に大学の教職員に伝わり、かつ、大学運営に反映される仕組みを整えること」が求められています。そして、 (5) の中に指摘されていますように「学生相談機関に相談に来る学生は卒業にこぎつける割合が高い」という報告もあり、増加する休学者や留年者の中からスチューデントアパシーや勉学意欲の減退・喪失といった"消極的理由"で不登校となっている者を発掘し、彼らが退学や場合によっては自殺といった道を選ぶ前に"救いの手"を差し伸べて行くことも殊更に重要なことと申せましょう。

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