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“相対的赤血球増多症”・・・水分補給で防ぐ健康トラブル!

梅雨が明けると本格的な夏!気温の上昇とともに発汗量が増え、体の水分が失われ易い季節です。部屋の中でも、最近はエアーコンディショニングによって空気が乾燥し、知らず知らずの間に体から失われる水分の量 (不感蒸泄 (ふかんじょうせつ) といいます) が以前に比べて多くなっています。 食事と食事の間隔が長くなっている方、飲まず食わずで仕事を続けている方・・・血液が濃くなって危ないですよ!脳梗塞や心筋梗塞を起こさないために、適度な食事間隔と積極的な水分補給をお忘れなく・・・

◆水分不足で起こる“相対的赤血球増多症”

血液は、赤血球・白血球・血小板 (けっしょうばん) などの有形成分と、血漿 (けっしょう) と呼ばれる液体成分から成り (図1)、全身の血管の中を循環して酸素や栄養分を体のすみずみまで運ぶなど、私達の体にとって無くてはならない働きをしています。血液全体に占める有形成分の割合 (ヘマトクリット値といいます) は男性で 40~50 %、女性で 35~45 %程度ですが、水分不足によって液体成分の血漿が少なくなると血液は濃縮された状態になり、有形成分の割合が相対的に高くなります (図2)。有形成分の中では、赤血球が白血球や血小板に比べて圧倒的に多いため、臨床的にこの状態は"相対的赤血球増多症"と呼ばれています。この時、血漿に溶けている様々な物質の濃度も高くなりますので、有形成分の相対的な増加とも併せて血液の粘度が高くなり、血液が細い血管に詰まって脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなります。

◆食事以外に必要な 800~1300 mlの水分補給

日本の気候で一般の人が必要とする水分量は一日約2,000~2,500 mlで、その内約 300 mlが体の中で生成され、約 900 mlが3度の食事で供給されるとされています。残り800~1,300 mlの水分補給が必要ということになりますが、食事がきちんとできていない場合には、その分を増やさなければなりませんし、発汗量や不感蒸泄の多くなる夏は冬に比べて補給量を多くしなければなりません。また、たとえ一日の水分補給量が足りていても、食事と食事の間隔が長くなったり、飲まず食わずで仕事を続けているといった場合には、一時的に水分不足の状態が生じることになりますから、意識して水分を補給することが肝要です。

(図2) 正常 (上) と相対的赤血球増多症 (下) の血液における有形成分 (主に赤血球) の割合。どちらも有形成分の量は同じだが、相対的赤血球増多症では液体成分 (血漿) の減少によって、有形成分の占める割合が高くなっている。

◆水分補給で改善される相対的赤血球増多症

臨床的に赤血球増多症を疑って精密検査が必要とされるのは、ヘマトクリット値で男性 55% 以上 (女性 47%以上)、もしくは赤血球数 600万/μ1以上 (550万/μl以上)、血色素量 18 g/dl 以上 (16g /dl以上) の時などです。本学の教職員の中にも、微少な脳梗塞の既往があって保健管理センター「からだの健康相談」を利用され、原因として相対的赤血球増多症を指摘された方がありました。この方の場合、職場と家庭の両方に麦茶の入ったポットを置かれて積極的な水分補給 (一日1,500 ml以上) に取り組まれた結果、相対的赤血球増多症の改善を見ましたが、一般的に水分を補給することは脳梗塞や心筋梗塞をはじめとするさまざまな健康トラブルを防ぐのにとても大切なことなのです。アルコールやカフェインの多い飲料 (コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶など) は利尿効果が強いためほどほどに・・・ノンアルコール、ノンカフェインの飲料 (水、麦茶など) がお勧めです。

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