ようこそ。神戸大学保健管理センターへ。

セクハラはあなたの身近に!・・・一人一人が、被害者・加害者となる可能性

文部科学省の発表によれば、平成13年にセクシュアル・ハラスメント (セクハラ) で懲戒などの処分を受けた国立大学の職員は32人で、過去最多となりました。セクハラとは「性的嫌がらせ」のことで、「相手が望まない性的言動によって、屈辱や精神的苦痛を感じさせたり、不快な思いをさせること」を言います。保健管理センター「こころの健康相談」にもセクハラに関する相談が寄せられるようになっています。

◆神戸大学生・大学院生の4.2%がセクハラ被害を経験

平成13年10月に神戸大学生・大学院生を対象に実施されたセクハラ実態調査 (神戸大学セクシュアル・ハラスメント防止委員会) では、回答を寄せた学部学生・大学院生の4.2%が「セクハラ被害を受けた経験がある」と答えています。また、ほぼ同時期に実施された学生生活実態調査 (神戸大学学生委員協議会) でも、「セクハラで不安や悩みを感じたこと」が「大いにある」 (1.6%) と回答した者や、「かなりある」 (1.3%) と回答した者が合わせて2.9 %あり、「まあまあある」 (5.5%) や「少しある」 (13.8%) まで含めると22.2%に達しています。

◆多い被害は「身体接触」、「言葉によるセクハラ」、「しつこい誘い」…

神戸大学におけるセクハラ実態調査で最も多かった被害は「身体接触」 (65.6%) で、以下「言葉によるセクハラ」 (36.0%)、「しつこい誘い」 (14.8%) 等 (複数回答) となっています (図、上)。セクハラは権力関係を背景にして生じることが多く、学生にとっては、指導や評価の面で大きな権力を持っている指導教官が加害者になりやすいとされています。同調査の結果でも、学部学生が被害者の場合の加害者は同級生、先輩、教官の順でしたが、大学院生が被害者の場合の加害者は教官が最も多く、次いで先輩、同級生の順でした (図、下)。

◆「明白な暴行や脅迫」がなくても「暗黙の強制力」がセクハラに!

元東北大学の大学院生だった女性が「修士課程在学中から交際や性的関係を結ぶよう強要されて精神的苦痛を被った」として指導教官の男性助教授を訴えていた裁判では、「助教授が指導者としての職権を濫用し、大学の行った調査でも虚偽の証言を繰り返すなど、女性に苦痛を与え、修学環境を悪化させた」として慰謝料750万円の支払いを助教授に命じる判決が下りました。指導教官と大学院生との間には構造的な権力関係が存在し、それが性的関係の強要を含めたセクハラに繋がったことを認めた画期的な判決とされています。同様の権力関係は上司と部下の間や、仕事上の利害関係者間などにおいても存在し、「明白な暴行や脅迫」がなくても「暗黙の強制力」を生じ、セクハラに繋がりやすいとされています (1)。

◆「自分がどう思うか」ではなく、「相手がどう感じるか」が問題

セクハラとは「性的嫌がらせ」のことで、「相手が望まない性的言動によって、屈辱や精神的苦痛を感じさせたり、不快な思いをさせること」ですから、交際や性的関係の強要だけを意味するものではありません。嫌悪感や不快感の抱き方にも個人差があるため、どこからどこまでがセクハラなのかという明確な基準を定めるのも難しい場合があります。最も大切なことは「自分がどう思うか」ではなく、「相手がどう感じるか」であるということです。例えば、男性の指導教官が女子学生を励まそうと、女子学生の肩を叩いたとしましょう。その教官としてはスキンシップのつもりで、性的な意図はなかったとしても、女子学生が不快な気持ちになったとすれば、それはセクハラということになります。また年齢や身体的特徴、結婚などプライバシーに関する発言もセクハラになることがあります。私達ひとりひとり、今一度、セクハラ被害者となる可能性とともに、セクハラ加害者となりうる可能性についても考えてみる良い機会なのかもしれません。

※(1) (財) 東京女性財団:編、大谷恭子、牟田和恵、樹村みのり、池上花英:著、「セクシュアル・ハラスメントのない世界へ」有斐閣、東京、2000

神戸大学保健管理センター

〒657-8501 神戸市灘区六甲台町1番1号
TEL:078-881-1212(内線5245) 078-803-5245(ダイヤルイン) FAX:078-803-5254