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夏です ・・・細菌性食中毒の季節です!

梅雨があけると夏本番!1年で最も食当たりや食中毒の多い季節です。既に5月には、本学の学生を含む 29 人が被害者となった食中毒事件も発生しました。

◆細菌性食中毒の症状は嘔気、嘔吐、下痢、腹痛など

食中毒には自然毒 (フグ毒、貝毒、キノコ毒など) によるものや、種々の化学物質によるものもありますが、病原性微生物 (細菌、ウイルス、原虫) によるもの、中でも細菌が原因となる細菌性食中毒が多くを占めています (下図) 1)。細菌性食中毒の症状は嘔気、嘔吐、下痢、腹痛などで、細菌の種類によっては発熱や神経症状を伴うこともあります。

◆細菌が死滅していても発症する"毒素型も"

細菌性食中毒には、体内に入って増殖した細菌が腸粘膜に侵入して発症するもの (感染侵入型) や、体内に入って増殖した細菌が産生する毒素によって発症するもの (感染毒素型)、食品中で細菌が増殖する時にできた毒素を摂取することによって発症するもの (毒素型) があり、毒素型の場合には食品中に生きた細菌が残っていなくても発症します。代表的な細菌性食中毒の原因であるサルモネラ菌は感染侵入型、腸炎ビブリオ菌やカンピロバクター・ジェジェニ/コリ、病原性大腸菌 O-157 は感染毒素型、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌は毒素型です (下表) 1)、2)。概して感染侵入型や感染毒素型は発熱を伴うことが多く、毒素型は潜伏期間が短いのが特徴です。細菌が産生する毒素には病原性大腸菌 O-157 のベロ毒素のように腸管出血や多臓器障害を起こしたり、ボツリヌス菌毒素のように複視 (ふくし)、嚥下 (えんげ) 困難、発声困難、呼吸困難といった神経症状をきたすものもあります。

◆細菌を「食品に付けない」、「増やさない」!

細菌性食中毒を予防するには細菌を食品に付着させないことが一番ですが、食品が私達の手許に届くまでに既に汚染されてしまっていることもあります。食品や手指をよく洗うとともに、感染源となりやすい物 (食肉、魚介類など) は他の物 (野菜、果物など) とは別の器具 (包丁やまな板など) で調理するといった工夫が必要です。また、食品に付着した細菌を増殖しにくくするには低温での保存が役立ちますが、冷蔵庫内で細菌の増殖が完全に停止するわけではなく、冷蔵庫保存を過信することは禁物です。

◆有効だが、万能ではない加熱処理

付着してしまった細菌を殺すために食品を加熱することも大切なことですが、その際、食品の表面だけでなく内部まで高温になるよう調理しなければなりません。また、毒素型の細菌の場合には殺菌だけでは不充分で、毒素を不活性化することが必要です。しかし、例えば黄色ブドウ球菌毒素では 100 ℃、30 分の加熱でさえも毒性が消失しないことが知られています。加熱処理もまた、万能ではないのです。細菌性食中毒は食品の流通や加工に携わる方々の細心の注意なしには防ぎえない面もありますが、私達もまた発症の可能性を低くする工夫をして夏の食を楽しんでまいりましょう。  

主な感染源 潜伏期間
感染侵入型
サルモネラ菌
食肉(牛,鶏),鶏卵 6 時間 ~ 3 日
感染毒素型
腸炎ビブリオ菌
カンピロバクター
ジェジェニ/コリ
病原性大腸菌 O-157

海水,魚介類
食肉

食肉(牛,羊)

4 時間 ~ 28 時間
1 日 ~ 7 日

6 時間 ~ 3 日
毒素型
黄色ブドウ球菌
ボツリヌス菌

手指の化膿巣
土壌,魚介類

1 時間 ~ 6 時間
12 時間 ~ 36 時間
代表的な細菌性食中毒の原因菌と主な感染源,潜伏期間

1) 本田武司,序:近年の食中毒,日本臨床,第 60 巻,第 6 号,1065 ~ 1069,2002 より

2) 木原 彊,細菌性食中毒,内科学,88 ~ 90 頁,朝倉書店,1991 より

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