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流行 (はや) っています !・・・"ヒト"インフルエンザと鳥インフルエンザ

今年もインフルエンザの流行期となり、保健管理センター「からだの健康相談」にもインフルエンザ症状の患者さんが毎日のように訪れるようになりました。また、日本を含む東アジア・東南アジア諸国を中心に鳥インフルエンザの感染地域がひろがり、ヒトへの感染例も報告されています

◆"カモ"に由来するA型インフルエンザウイルス

インフルエンザウイルスには A 型、B 型、C 型の3種類があり、A 型はヒトやブタなどの哺乳類と多くの鳥類に、B 型はヒトとアザラシに、C 型はヒトとブタに感染することが知られています。中でも A 型は、今までにもスペイン風邪 ( 1918 年)、アジア風邪 ( 1957 年)、香港風邪 ( 1968 年) など、ヒトへの大流行や家禽・家畜への流行により多大な人的・経済的損失をおよぼしてきました。いま国内でヒトに流行しているインフルエンザウイルスも A 型が最も多いと報告されています (神戸市感染症定点観測所情報)。今日では、ヒト、家畜、家禽の A 型インフルエンザウイルスは全て、渡り鳥であるカモのウイルスに由来することが判っています。

◆大流行を引き起こす新しい亜型のウイルス

A 型インフルエンザウイルスはウイルス表面の2つの糖蛋白質 (とうたんぱくしつ) [ヘマグルチニン ( H1 ~ H15 の 15 種類) とノイラミダーゼ ( N1 ~ N9 の 9 種類) ]の違いによって亜型に分類されています。例えばスペイン風邪の原因となったウイルスは H1N1、アジア風邪のウイルスは H2N2、香港風邪のウイルスは H3N2 でした。いま問題となっている鳥インフルエンザウイルスは H5N1 で、ヒトにとっては新しいヘマグルチニン亜型 ( H5 ) を持つことから、ヒトからヒトへと感染する性質を獲得すると、ヒトでの大流行を引き起こす可能性があり、恐れられているのです。

◆新型インフルエンザウイルス誕生の可能性は常に!

ヒトインフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスの両方に感染するブタの体内では、両方のウイルスが混ざって新たな性質をもったウイルスが誕生することが知られています。1968 年の香港風邪では、カモのウイルスが中国南部のアヒルに感染し、さらにブタに感染して、その体内で新しいウイルスが誕生し、ヒトでの大流行を引き起こしたと考えられています (上図)。カモからは全ての種類のヘマグルチニン亜型とノイラミダーゼ亜型のウイルスが見つかっていて、今後もヒトにとって新しいタイプのウイルスが誕生する可能性は常にあります。1997 年に香港でヒトへの感染例が初めて報じられた H5N1 では、カモのウイルスがニワトリに感染して病原性を獲得し、ブタを介することなく直接ヒトに感染したと考えられていますが、今回と前回とでは遺伝子が異なっているとの報告もあります。

香港風邪インフルエンザウイルス[A/Hong Kong/68 (H3N2) ]の感染経路1) より

◆大切な日常の"うがい"と"手洗い"

昨年、重症急性呼吸器症候群 ( SARS ) の対策の一環として保健管理センターで実施のインフルエンザワクチンは、A 型インフルエンザウイルス ( H1N1 ならびに H3N2 ) と B型インフルエンザウイルスに対するものでした。ワクチンは流行する可能性の高いインフルエンザウイルスの種類を予測して製造されますが、ワクチン株とは異なるインフルエンザウイルスが流行することもあります。手軽にできるインフルエンザの予防としては"うがい"と"手洗い"の励行が有効です。また、インフルエンザウイルスは熱に弱く、75℃、1分間の加熱で死滅することも判っています。H5N1 では、生きた鶏や鶏糞への不用意な接触を避けることも大切でしょう。予防の第一歩は私達の日常にあるともいえるのです。

インフルエンザ予防の基本は"うがい"と"手洗い" 

(文献)

1.喜田 宏、自然界におけるインフルエンザウイルスの分布と循環、日本臨床、61: 1865,2003

2.前田寧子、他、インフルエンザウイルスの型別分類とゲノム構造、 日本臨床、61: 1886,2003

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